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介護リーダーや上司が意識すべき報連相「ほうれんそう」

 介護の仕事に限らず、仕事におけるコミュニケーションが重要だということは皆さんご承知の通りです。ただ、私たち対人援助を生業とする介護のお仕事では、他産業に比べて様々な関係者とのコミュニケーションが求められます。対利用者、対家族、上司や部下、職場内の介護職チーム、職場内の他職種、他事業所、行政、他機関、地域住民などです。そして、利用者さんへのコミュニケーション技法と、他職種連携におけるコミュニケーションが違うように、それぞれのコミュニケーション対象者に対しては、それぞれの相手に応じたコミュニケーションの技術や方法、お作法があります。それらを使い分けることが仕事を進めていく上で重要になってくるのです。

 今日はその中でも特に上司と部下の関係におけるコミュニケーションのうち最も基本的なものであり、そして最も重要な「報告」「連絡」「相談」のいわゆる「ほうれんそう」について詳しくみていきたいと思います。

1.職場で最も基本のコミュニケーション「報連相」

 それでは職場で最も基本のコミュニケーションと言われる「報告」「連絡」「相談」についてまずは基本的な特徴から、それぞれ「何を伝えているのか」時間軸の観点から見てみます。

 「報告」とは、進めている仕事の途中経過や、進め終わった仕事の完了を相手に伝えることです。そして報告をする時点では、基本的にその報告内容は完了している過去のことになっているのが特徴です。

例)主治医の先生からAさんに新しいお薬が処方されました。排便を促す下剤で、朝に1錠追加になっており、今までのお薬と一緒に一包化されています。全職員に伝達するために申し送りノートに記載しておきました。(すでに終わっている過去のこと)

 「連絡」とは、これから予定されていることや取り組むべきことなど、連絡をする時点よりも未来のことについて相手に理解して欲しいことや、行動して欲しいことを伝えることが特徴です。

例)Aさんの朝のお薬に下剤が1錠追加されましたので、各自申し送りノートを読んでください。Aさんの排便状況について変化があるかもしれないので、その点を踏まえて排泄ケアと記録をしてください。(未来に起こりうることに対して行動して欲しいこと)

 「相談」とは、「過去や現在の状況」「未来の予定や予測」を踏まえて、自分や相手の考えを共有しながら、これからの未来に対して課題や問題についてとるべき行動の意思決定をするというものです。

例)Aさんの下剤が追加されてから下痢が昨日まで3日間続いています。今朝も下痢でしたのでまだ続くかもしれません。失禁や脱水も心配されるので、主治医に現状をお伝えして下剤の調整をしてもらう必要があると思うのですがいかがでしょうか。(過去現在の状況と未来を踏まえて行動の意思決定をしようとしている)

 いかがでしょうか。それぞれのイメージが少しつかめてきたでしょうか。

2.「報告」「連絡」「相談」はなぜ行うのか?

 「報告」「連絡」「相談」の特徴についてみてきましたが、皆さんはそもそもこの3つは何のために行うものかその目的についてわかっているでしょうか。ここからは「報告」「連絡」「相談」それぞれの目的についておさえていきましょう。

 まず「報告」の目的は、報告を受ける人が報告内容(=つまり情報)をもとに意思決定や次に行うべき行動を判断するために行うものです。基本的に報告を受ける人は報告をする人よりも上位者であることが一般的ですが、逆のこともあります。いずれにせよ、報告を受ける人が意思決定や行動を判断するために行われるのが「報告」なのです。

 次に「連絡」の目的は、連絡をする人が、連絡を受ける人に連絡した内容の通りに具体的行動をしてもらうためのものです。

 そして「相談」は、相談を受ける人の助言やサポートを得て、相談する人が意思決定や何か行動することができるようにすることが目的です。

 ここまでの内容をまとめると次のような表にすることができると思います。

 皆さんが「報告」「連絡」「相談」をする立場なのか、受ける立場なのか、または上司なのか部下なのか、それともフラットな関係性なのかによって少し意味合いは異なってくるかもしれませんが、概ねこのようにおさえておくと良いでしょう。

表1:「報告」「連絡」「相談」の特徴と目的

 

3.介護リーダーや上司の立場から考える「ほうれんそう」

 「報告」「連絡」「相談」それぞれの特徴・目的をおさえたところで、今度はあなたを介護リーダーや管理者など上司という立場に設定してみて、上司と部下の関係から3つの役割を考えていきましょう。

 あなたは上位者ですから、色々な情報から現場や経営の判断を行い、部下には指示命令を出してより良い事業所運営をしなければならない立場です。このような状況からするとあなたにとって重要なのはより正確で適切な情報を現場からもらうための「報告」であり、職員が自分の描いている通りの仕事を進めるために具体的な行動を求める「連絡」の二つになってくるものです。この二つはあなたにとって直接的に大事な部下とのコミュニケーションになります。

 一方で「相談」はあなたよりさらに上位者と物事を決めたり、自分の意思決定や行動を進める上で重要になってきます。つまりあなたが「相談する側」の時は直接的に重要なものになってきます。しかし「相談を受ける側」になった場合はいかがでしょうか。他にもたくさんの仕事があり、都度職員と面接はしています。しかし、それでも何かを“相談される”時は(内容によりますが)少し気が重くなったりしないでしょうか。

 先述しましたように「報告」「連絡」「相談」は自分がそれをする側なのか受ける側なのか、また上司なのか部下なのかによってその重要性は実際的にも心理的にも変わってくるものなのです。先ほどまとめた表1を自分が上司の立場だと仮定して見直すと「報告」と「連絡」はそれぞれ上司であるあなたのための要素が強いのに対して、「相談」はあなたが自分の上司にする時の方があなた自身のためである要素が強いことが見えてくるのではないでしょうか。ここから見えてくることを表2にまとめてみました。

表2:自分が上司の立場である時の「報告」「連絡」「相談」

 グレーの部分があなたが上司の立場の時に多い立場です。そうすると、「相談」はよく受ける側でありながら、相手要素なことがわかります。つまり「相談」は部下のためのものであることが多いのです。そして、人間は「相手のための報告」や「相手の意図に沿って動く連絡」よりも「自分の迷いや悩みを解決に向かわせる“相談”」の方が好ましく感じるものなのです。

 したがって、ここから見えてくるのは上司の立場である時人は「相談」を受けやすいが、それは相手(=部下)のためのものであることについて認識しなければならないということです。

4.介護リーダーや上司の立場で重要なのは「相連報」の順番

 ここまでみてきたように、あなたが上司の立場である時は部下のためのものである「相談を受ける」ことについて、あなたは「相談」の特徴と目的をより強く意識化して受けなければならないということです。つまり、言い換えるとあなたは部下に対してより積極的な“聴き手”になることが重要だということです。人の話をよく聴いてくれる人は好かれるというのは皆さん経験則的に感じているとは思いますが、上司はそれを意識的に行う必要があるということです。

 このように考えると「報告」「連絡」「相談」=「ほうれんそう」という言葉は上司の立場で、上位者主体とした標語のように見えてきます。確かに、これまでの日本の会社組織の中ではそのような縦社会的なあり方がより成果を生み出しやすい時代であったかもしれません。しかし、令和の時代においては限りある労働人口の中で、一人ひとりの従業員の個性と力量を伸ばし、働きやすい職場環境を作ることが組織の成長の鍵として捉えられています。特に介護のような労働集約型の産業にあっては、人材こそが最も重要な経営資源です。

 ですから、あなたが上司の立場であるときは「相談」「連絡」「報告」という「そうれんほう」の順番を意識することが重要になってくるでしょう。つまり、部下の話を聴いてあげて、その上で的確な指示を伝えてあげて、成果の報告を共に喜び合うという育て方です。ですから、まずは「相談」しやすい環境や「相談」しやすい関係性を組織全体で作っていくことが重要です。もちろん、部下に対して「報告」「連絡」「相談」の順番の意味やそれぞれの目的を踏まえて組織全体が健全に前進し、利用者さんのために良いサービスを提供する上で重要であるという教育自体は行わなければなりません。

 ある意味一般用語となっていた「報告」「連絡」「相談」について、それぞれの特徴と目的を踏まえた上で、現代の組織づくり、人材育成に適した「相連報」を意識化することがこれからの介護リーダーや上司に求められることだと言えるでしょう。

5.まとめ

 「報告」「連絡」「相談」はそれぞれ組織を前進させ、利用者さんに質の高いサービスを提供するために重要なコミュニケーション手段です。その特徴と目的はそれぞれを“する側”“受ける側”によってその要素が変わってきます。

 「報連相」の順序は上位者を中心とした順番と解釈できるものとも言えます。人材が貴重なこれからの時代には、介護リーダーや上司はそれぞれの特徴と目的を部下に丁寧に教育した上で、自身は「相連報」の順を意識化することが重要になってくるといえるでしょう。

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