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介護福祉士を取得する4つのメリット

1.介護福祉士を取得する意義

本記事では、次のような方に向けて介護福祉士を取得するメリットをご紹介したいと思います。
・介護福祉士取得のメリットがわからないという方。
・介護福祉士をまだ持っていない方。
・現在介護現場で介護の実務についている介護職や訪問介護員の方。
・業界経験3年未満の方や介護福祉士受験を悩んでいるベテラン介護職の方。
・今後1〜2年は最低でも介護業界で頑張ろうと考えている方。
・従業員に介護福祉士を取得を勧めたい管理・経営層の方。

 介護福祉士は日本で唯一の介護福祉に関する国家資格です。
 介護業界は、介護福祉士を中心として様々な資格が混在しており、業界人でもその変遷と詳細を知らない方が多いほど複雑です。そうしたこともあり、介護福祉士という資格自体があまりよく知られていなかったり、資格を取得することの価値がわからないという方も珍しくありません。

 確かに、私がこの業界に入った2000年代は「介護福祉士をとっても給料は上がらないし、何にもメリットがない」という「資格無意味論」の声はよく聞かれました。これはある意味事実だった面もあると言えます。しかし、2020年代以降の介護業界では、介護福祉士は介護職であれば誰もが目指すべき基本的キャリア形成の最初のステージと言えます。そして、昨今の介護福祉人材の制度設計は介護福祉士を一つの基準として再編成されつつあるのです。

 つまり、介護福祉士を取得しないと、介護現場で働き続けることも、介護現場以外のキャリアを形成していく上でも割と不利だと言える時代になってきているのです。もちろん「週数回・月数回くらい介護現場に関われていればいい」、「今のままパートで時間と体力がある間だけ関われたらいい」といった労働者それぞれの事情や希望はあるでしょうから、全員が取得する必要はありません。ですから、まずは冒頭に挙げた方々で自分だなと思った方は是非ご覧ください。

 

2.介護福祉士の課題と今後の方向性

介護福祉士を取得するメリットは次の4つになります。

・介護職としての力量の底上げ
・職場での評価につながる
・業界内のキャリア形成に有利
・介護業界以外の方に対する対外的な安心と信用

 それぞれのメリットを説明していく前に、介護福祉士のあゆみと課題・今後の方向性を見ていくことで、4つのメリットの理解がさらに深まると思います。ですから、まず介護福祉士の概要と現在の状況を見ていきましょう。

 介護福祉士は1987(昭和62)年に交付された「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められている介護福祉に関する唯一の国家資格です。令和4年6月末日現在で約187万人以上が登録しています。

 特徴的なのはその取得方法です。資格制度開始当初から現在まで一部の変更点は重ねてきましたが、一貫して資格を取得するために大きく2つのルートが用意されていることがあるのです。

 1つのルートは介護福祉士養成施設と呼ばれるいわゆる介護福祉士養成校に入学して、既定のカリキュラムを経て取得する「養成校ルート」です。そして2つ目は「実務経験ルート」と呼ばれるものです。これは現場で3年の実務経験を重ね、加えて介護福祉士実務者研修(450時間)を修了した上で国家試験を受けるルートです。一点付け加えると、実務者研修制度は2013年4月からスタートした制度なので、それ以前は研修を受けなくても実務経験だけで受験ができていました。

 医療福祉業界における他の国家資格を見てみると、医師、看護師、社会福祉士、保育士などいずれも養成校を経て国家試験を受験したのちに取得できることが一般的です。しかし、介護福祉士には「実務経験ルート」が用意された状態で長年資格制度が運用されてきたのです。この背景には制度設立当初の時代背景が大きく関わっていますが、ここでは割愛します。

 抑えておきたいのは、この資格取得ルートが二つになってしまったことが、先の「資格無意味論」の要因の一つになっている可能性があるということです。ある調査によると、施設サービスでは、養成校で体系的な学びを経て介護福祉士を取得した人が約15%しかいないというデータがあります。同調査によると現場には約58%前後の介護福祉士がいるので、3倍近くが実務経験ルートの介護福祉士となります。

 こうしたことから、やや極端な表現ですが、現場では「わざわざ学校なんか行かなくても、現場やっていれば取れる資格」「学校行って資格取っても、未経験者は現場では使えない」「資格があっても現場で使えなきゃ意味がない」といった、国家資格より、現場の実務経験で仕事ができればいいという風潮が認識されてしまっていたのです。

 加えて、制度的にも国家資格の有無で明確な従事者の力量差を測れなかったことから、有資格者の賃金を優遇する後押しができず、経営側も資格より現場の実務能力で評価せざるを得なかったのです。こうしてますます「資格を取っても別に給料も上がらない」という「資格無意味論」が広がったと私は考えています。

 しかし、近年国民の介護ニーズに応えていくため、また介護職のキャリアを形成していく上で、こうした風潮を打破し、介護福祉士を軸に資格制度を再構築する動きが国主導で進められています。そして、各種加算に介護福祉士有資格者であることを算定根拠とするものも現れてきたことで、流れが少しずつ変化しています。もはや「資格無意味論」は古い考え方で、今後は介護福祉士を介護業界のキャリア形成の軸とする方向性だということを皆が認識しなければならないということです。

3.介護福祉士取得の4つのメリット

 それでは、介護福祉士を取得する4つのメリットをそれぞれ見ていきたいと思います。

①介護職としての力量の底上げ

 まず1つ目はその人自身の介護職としての専門性を高めるというメリットがあります。ご存知の通り介護の仕事は訪問介護員以外では、無資格未経験で始められる仕事です。介護職になることのハードルは低いです。しかし、実際の現場では求められる知識と技術、専門性は奥深く、現場に立てば誰もが痛感するはずです。それにもかかわらず、私を含めて介護現場の多くの方は介護福祉に関する体系的な学びをせずに今も現場に立ててしまっています。これは一歩引いてみるととても怖いことです。

 ですから、介護福祉士実務者研修での学びや、介護福祉士国家試験に向けた勉強は大変重要だと言えます。私たち介護福祉の仕事は、公的財源に基づく国民を対象とした対人支援の仕事です。介護福祉士の取得はもっとも基本的な介護福祉に関する専門性を学ぶ機会となり、それは必ずその人の介護職としての専門性を高めるものとなるはずです。

 

②職場での評価につながる

 2つ目のメリットはその人が働く職場での評価につながるということです。先述しました通り、以前の介護現場では資格そのものの評価は難しい時代がありました。しかし、近年の傾向では介護福祉士を取得して一定の経験年数を重ねることは具体的な評価の対象となっています。経営者側にとっても、長く働き続けてもらうために、良い人材は登用していきたいものです。そうした新たなポストには制度的にも評価の条件となる介護福祉士を条件とするところも出てくることでしょう。また、求人広告をみると、有資格者の給与、時給も無資格者と差別化して掲載する事業所も一般的になってきました。

 そして、介護福祉士が必要とされる訪問介護のサービス提供責任者など、一部の人員配置基準上のポストは介護福祉士であることがある種の業務独占になっているとも言えます。また、条件はありますが、医療的ケアという重要な業務を行える条件にもなってきています。この意味で、介護福祉士を取得することは職場における評価、時にはダイレクトに給与アップにつながるという時代になっていると言えます。

③業界内のキャリア形成に有利

 3つ目のメリットは、介護業界内における転職やキャリア形成に有利ということです。②で触れたように、今後は業界において介護福祉士の有資格者はさまざまな面で価値が認められてくると考えられています。以前、大手介護企業が介護福祉士の待遇を上げると大々的にP Rしたことが業界内で大きな話題となりました。

 また、介護業界は今後まだまだ人材を養成していくことが国の方向性として示されていることからも、介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修の講師など介護福祉士有資格者が育成側として求められることも増えてきています。教育という意味では介護福祉士養成校の教員になるキャリアもあるでしょう。しかし、こうしたキャリアを広げる機会がやってきても、その時資格を持っていなかったらチャンスを逃してしまうということもあるでしょう。こうした意味でも、介護福祉士取得はその人の今後のキャリア形成において重要だと言えます。

 経営者側からすると身内の職員に「転職に有利だよ」というのは違和感があるかもしれません。しかし、現状はそうなっていますし、経営者も有資格者に定着してほしいと考えているはずです。ですから、職員の将来やキャリアも考えて助言ができるかどうか、それほどの懐の深さを伝えられることが職員との信頼関係にもつながるでしょう。いずれにせよ、キャリア形成に重要な意味があることは伝えるべきメリットと言えます。

④介護業界以外の方に対する対外的な安心と信用

  最後のメリットは、介護業界以外の人に対して「介護福祉業界で一定の経験と専門性を兼ね備えています」と対外的に示すことができるということです。これは身近なところで言えば、利用者さんやその家族に対して国家資格保有者であるということで、一定の安心と信用を頂けるメリットがあると思います。私たちの仕事の基本は利用者さんやその家族あってのことですから、第一義的な価値があります。私たちも自分の生命や生活を支援してもらう専門職ですから、無資格者より国家資格保有者の方が安心や信用ができますよね。

  その他、一般的な介護業界以外の方にも自分の対外的価値を伝えることができます。例えば、医師や弁護士、議員、代表取締役、といった職業資格や肩書きはその人の社会的地位や立場、能力を一定程度担保する力があります。その意味で介護福祉士はそれほどの社会的承認を得ているわけではありません。しかし、業界外の人にしてみたら、そうしたことは解らずとも介護に関する国家資格を持っているというのはそれだけで一定の担保になるのです。つまり対外的に「この人は介護のプロ、介護の専門家なんだ」ということを伝える効果があるのです。

  近年介護現場での経験を踏まえ、介護業界以外で活躍する人が増えてきています。少子高齢化が進む日本の市場の中で、さまざまな業界の人が高齢者に対する商品開発、高齢者の金融相談、働く介護家族の相談支援、といった高齢者を対象とするビジネスに進出しています。そうした中で、高齢者の日常生活をよく知る介護福祉士の存在が注目されているのです。

  そうした業界外のチャンスを掴む上でも、国家資格を持っています、と言えるかどうかは対外的な信用を掴む上で大変重要な意味があると言えるでしょう。

4.まとめ

 介護福祉士取得のメリットについてみてきました。これらのメリットは人によって響くポイントが異なると思います。ですから、ご自身の状況に引き合わせてイメージしてみていただけたらと思います。

 しかし一番大事なことは、この資格を取得することで自分がどうなりたいか、その人にどうなって欲しいのかというビジョンを持つことの方ではないかと思います。メリットがあるから取得ことも重要ですが、その先にどういう生き方をしたいか、この資格を取得して何をしたいかということだと思います。

 ぜひこの記事をきっかけに、介護福祉士の取得を目指すと同時に、その先の自身の未来を思い描いてみてください。

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